※2006年〜2010年に投稿された100件の中から「おはなしオバケーター賞」に選ばれた作品です。
 

優しい夜明け
作:麦CHA

「今日はこの辺で!」

ニヤリと笑って道路に寝転ぶのは、転ばなな。

「誰か転んでくれないかなぁ♪」

とっても楽しみな転ばなな。

 

しかし、昼になっても・・・・・

 

 

夕方になっても・・・・・

 

 

「なんで今日は人が・・・・・グスッ・・・・・うぇ〜ん」

転ばななは泣き出してしまった。

だって、転ばななの楽しみは人を転ばせること。

今日はちっとも楽しくない日。

 

力なくぐったりとしていた転ばなな。

そこに通りかかったのは・・・・・めで金。

 

「どうしたの?何か悲しいことでもあったの?」

めで金は転ばななを見つけると、優しくきいた。

転ばななはありのままを話した。全て。

 

 

「そうなの・・・・・かわいそうに。でも、気分を暗くしてはダメよ。もっと悲しくなっちゃうわ!」

めで金は大きな声で言うと、立ち上がった。

「さ、アナタもいっしょに踊りましょ♪」

めで金は踊りだした。とても軽快なリズムで。

見てるうちに、転ばななも踊りたくなった。

 

「♪ー・・・・・♪ー・・・・・♪ー!」

2人は踊った。踊り続けた。夜が明けるまで。

太陽が昇るまで。

 

空に?

 

ううん、違うよ。

 

 

転ばななの心に、太陽が昇るまで。

転ばななの心が、すっきり晴れ渡るまで。

 

 

転ばななは、気がつくと眠っていた。

きっと疲れてしまったのだろう。

でも、まわりにはもうめで金はいなかった。

 

転ばななは笑った。

悪戯な笑いじゃなかった。

とても素直で、素敵な笑顔をお天道様に向けた。

 

 

「ありがとう、めで金。」