※2006年〜2010年に投稿された100件の中から「おはなしオバケーター賞」に選ばれた作品です。
 

みたらしみたらし
作:宙ぶらりん

少し薄暗い住宅街を、僕は塾の鞄を振り回しながら歩いていた。

   べちょっ。

「ひっ!」

びっくりして振り向くと、そこには大きな目玉。

「うわあああああああああああ!!」

目玉はさらに僕に近づいてきて、何かべとべとしたものを僕になすり付けてくる。

「わああああああああ!わああああああ!」

僕は慌ててそいつを突き飛ばした。手にべとべとが貼りついた。

よく見ると、それは団子のタレだった。

みたらし団子のみたらし。

そして僕の目の前にいるのは、巨大な団子だった。

一番上の団子に、大きな目玉が一つ、悲しそうに僕を見ていた。

「…おともだち…」

「…え?」

「…おともだちになってくれませんか…」

大きな団子は恥ずかしそうに下を向いた。

「……いいよ。」

「ほ、ほんと…!?」

「うん!」

僕は団子をぎゅっと抱きしめた。

みたらしがべとべとくっついたけど、そんなの気にならなかった。

 なんだかこのお団子が、とってもかわいらしく見えたから。

「…じゃああなたも、きょうからおだんごね。」

 

気がつくと僕は、団子になっていた。

目は一つ。からだじゅうがべとべと。

「きょうからあなたも、ひとつめだんご。」

僕の前にいる団子が、大きな目を歪ませて、無い口で笑った。