みたらしみたらし
作:宙ぶらりん
少し薄暗い住宅街を、僕は塾の鞄を振り回しながら歩いていた。
べちょっ。
「ひっ!」
びっくりして振り向くと、そこには大きな目玉。
「うわあああああああああああ!!」
目玉はさらに僕に近づいてきて、何かべとべとしたものを僕になすり付けてくる。
「わああああああああ!わああああああ!」
僕は慌ててそいつを突き飛ばした。手にべとべとが貼りついた。
よく見ると、それは団子のタレだった。
みたらし団子のみたらし。
そして僕の目の前にいるのは、巨大な団子だった。
一番上の団子に、大きな目玉が一つ、悲しそうに僕を見ていた。
「…おともだち…」
「…え?」
「…おともだちになってくれませんか…」
大きな団子は恥ずかしそうに下を向いた。
「……いいよ。」
「ほ、ほんと…!?」
「うん!」
僕は団子をぎゅっと抱きしめた。
みたらしがべとべとくっついたけど、そんなの気にならなかった。
なんだかこのお団子が、とってもかわいらしく見えたから。
「…じゃああなたも、きょうからおだんごね。」
気がつくと僕は、団子になっていた。
目は一つ。からだじゅうがべとべと。
「きょうからあなたも、ひとつめだんご。」
僕の前にいる団子が、大きな目を歪ませて、無い口で笑った。