※2006年〜2010年に投稿された100件の中から「おはなしオバケーター賞」に選ばれた作品です。
 

満月の夜の授業
作:ハーマイオニー

それは、満月の夜だった。

 

 

ぼくは、月を観察するのが好きなので望遠鏡を持って外へ出た。

月は、とてもきれいだった。

 

 

10分ほど経って、もうそろそろ寝ようと思い、家に入ろうとした。が、得体の知れない生き物に引き止められてしまった。よく見るとそいつは、月の形をしていた。さすがに怖くて、その生き物に背を向けて、走り出そうとした。が、またも止められてしまった。ぼくは、少しイライラしてそれを突き飛ばそうとした。でも、ほくがそうする前にそいつはしゃべったのだ!幻覚ではなかった。本当にしゃべったのだ!しかも、親しげな笑みをうかべて「やあ」としゃべったのである。

?「こんばんは、ぼくはつきみっちです。」

いきなりていねいに言われてびっくりしたぼくは、なにも言葉を返せなかった。

つきみっち「ぼくが、月について教えてあげるよ」

つきみっちはそう言って、さっさと準備をはじめてしまった。ぼくにはどうすることもできなかったので、ただひたすらつきみっちの準備を見ていることにした。

 

十分後・・・

 

つきみっち「準備が終ったよ」

半分寝ていたぼくは、つきみっちの声に飛びあがってしまった。なにしろ、もう十一時をまわっていたのだ。

つきみっち「じゃあ、授業を始めます」

そうして、つきみっちの授業は始まった。

 

 

一時間後・・・

 

 

つきみっちの授業はえんえんと続いたが、月が好きなぼくにとっては、とてもおもしろかった。

 

気がつくと、十二時だった。これから帰ったら、お母さんはどんな顔をするだろうか。そう思ったら少し笑ってしまった。

 

 

つきみっち「これで、授業を終わります」

そう一言いうと、つきみっちは消えてしまった。

 

明日友達に自慢しよう、そう思った瞬間明日が土曜日だったことを思い出し、一人で笑った。そして、月に祈った。

「このことが、夢じゃありませんように・・」

と・・・

 

「10年前、お父さんはつきみっちというオバケに会ったんだ。嘘じゃないぞ。つきみっちは月についていろいろ教えてくれたんだ。だから天文学が得意になったのさ」

「え〜本当?僕はそんなオバケ聞いたことないぞ」

雄哉(ゆうや)は、父の龍樹(りゅうき)とつきみっちについて話していた。なんと父はオバケに会ったことがあるという。僕に言わせれば全くもって嘘だとしか言いようがない話だったが。

「今夜は満月だぞ。もしかしたら、お前もつきみっちに会えるかもな」

父さんは笑っていった。

「どっちにしろ、今日は月の観察に外に出るんだ。支度をしといたほうがいい。」

「やったあ。月を見に行くなんて知らなかった。急いで支度をしなきゃ。」

「おい、まだ昼だぞ。」

雄哉の月好きは父も呆れかえるばかりである。もとはと言えば、父が月好きだったせいだったのだが。

 

その夜...

 

「よーし、準備は出来たか?」

父もご機嫌でいった。

「おー!」

「おー!」

僕と弟は声をあわせて元気よく答えた。

「では、しゅっぱーつ」

父が夜中だと言うのに大声をだした。

 

数分後....

 

やがて、父がつきみっちに会ったという丘についた。すると、どこかで声がした。

「おーい、ひさしぶりですねー」

「おーっと、つきみっちのお出ましだ。」

その月のようなものがつきみっちらしい。なんだ、もっと格好いいのを想像してたのに。

父とつきみっちは

「10年ぶりですね」

「元気だったか?」

などと、しゃべっている。ったく、何しに来たんだか。

「2人とも、こっちで望遠鏡の取り付け手伝ってよ」

「おお、そうかそうか。ところでこの2人はうちの息子なんだよ。」

おい。紹介はいいから手伝ってくれ。

 

しばらくして...

 

「おーい、望遠鏡をセットしたよ。」

「おお、そうか。じゃあ月を見るとしよう。」

「わたしも、ご一緒させていただきます。」

月はとてもきれいだった。言葉では言い表せないほどに。

「では、これから授業を始めます。」

「おおっ、懐かしいな。」

「お兄ちゃん、授業ってなに?なんで授業なの?学校じゃないのに」

そんなこと分かるかっ

叫びだしたいのを堪えて、僕は椅子に座った。長い長い授業だった。だが、とてもおもしろみがあったし、簡単に理解できた。

「これでお前たちも信じるだろう。つきみっちのことを。」

「当たり前。」

そういって僕はにやりとした。

 

 

帰り道、僕は心の中でこう思った。

 

僕も

 子供につきみっちのことを教える日が

            来るのだろうか

                 と......