満月の夜の授業
作:ハーマイオニー
それは、満月の夜だった。
ぼくは、月を観察するのが好きなので望遠鏡を持って外へ出た。
月は、とてもきれいだった。
10分ほど経って、もうそろそろ寝ようと思い、家に入ろうとした。が、得体の知れない生き物に引き止められてしまった。よく見るとそいつは、月の形をしていた。さすがに怖くて、その生き物に背を向けて、走り出そうとした。が、またも止められてしまった。ぼくは、少しイライラしてそれを突き飛ばそうとした。でも、ほくがそうする前にそいつはしゃべったのだ!幻覚ではなかった。本当にしゃべったのだ!しかも、親しげな笑みをうかべて「やあ」としゃべったのである。
?「こんばんは、ぼくはつきみっちです。」
いきなりていねいに言われてびっくりしたぼくは、なにも言葉を返せなかった。
つきみっち「ぼくが、月について教えてあげるよ」
つきみっちはそう言って、さっさと準備をはじめてしまった。ぼくにはどうすることもできなかったので、ただひたすらつきみっちの準備を見ていることにした。
十分後・・・
つきみっち「準備が終ったよ」
半分寝ていたぼくは、つきみっちの声に飛びあがってしまった。なにしろ、もう十一時をまわっていたのだ。
つきみっち「じゃあ、授業を始めます」
そうして、つきみっちの授業は始まった。
一時間後・・・
つきみっちの授業はえんえんと続いたが、月が好きなぼくにとっては、とてもおもしろかった。
気がつくと、十二時だった。これから帰ったら、お母さんはどんな顔をするだろうか。そう思ったら少し笑ってしまった。
つきみっち「これで、授業を終わります」
そう一言いうと、つきみっちは消えてしまった。
明日友達に自慢しよう、そう思った瞬間明日が土曜日だったことを思い出し、一人で笑った。そして、月に祈った。
「このことが、夢じゃありませんように・・」
と・・・
「10年前、お父さんはつきみっちというオバケに会ったんだ。嘘じゃないぞ。つきみっちは月についていろいろ教えてくれたんだ。だから天文学が得意になったのさ」
「え〜本当?僕はそんなオバケ聞いたことないぞ」
雄哉(ゆうや)は、父の龍樹(りゅうき)とつきみっちについて話していた。なんと父はオバケに会ったことがあるという。僕に言わせれば全くもって嘘だとしか言いようがない話だったが。
「今夜は満月だぞ。もしかしたら、お前もつきみっちに会えるかもな」
父さんは笑っていった。
「どっちにしろ、今日は月の観察に外に出るんだ。支度をしといたほうがいい。」
「やったあ。月を見に行くなんて知らなかった。急いで支度をしなきゃ。」
「おい、まだ昼だぞ。」
雄哉の月好きは父も呆れかえるばかりである。もとはと言えば、父が月好きだったせいだったのだが。
その夜...
「よーし、準備は出来たか?」
父もご機嫌でいった。
「おー!」
「おー!」
僕と弟は声をあわせて元気よく答えた。
「では、しゅっぱーつ」
父が夜中だと言うのに大声をだした。
数分後....
やがて、父がつきみっちに会ったという丘についた。すると、どこかで声がした。
「おーい、ひさしぶりですねー」
「おーっと、つきみっちのお出ましだ。」
その月のようなものがつきみっちらしい。なんだ、もっと格好いいのを想像してたのに。
父とつきみっちは
「10年ぶりですね」
「元気だったか?」
などと、しゃべっている。ったく、何しに来たんだか。
「2人とも、こっちで望遠鏡の取り付け手伝ってよ」
「おお、そうかそうか。ところでこの2人はうちの息子なんだよ。」
おい。紹介はいいから手伝ってくれ。
しばらくして...
「おーい、望遠鏡をセットしたよ。」
「おお、そうか。じゃあ月を見るとしよう。」
「わたしも、ご一緒させていただきます。」
月はとてもきれいだった。言葉では言い表せないほどに。
「では、これから授業を始めます。」
「おおっ、懐かしいな。」
「お兄ちゃん、授業ってなに?なんで授業なの?学校じゃないのに」
そんなこと分かるかっ
叫びだしたいのを堪えて、僕は椅子に座った。長い長い授業だった。だが、とてもおもしろみがあったし、簡単に理解できた。
「これでお前たちも信じるだろう。つきみっちのことを。」
「当たり前。」
そういって僕はにやりとした。
帰り道、僕は心の中でこう思った。
僕も
子供につきみっちのことを教える日が
来るのだろうか
と......