circus。〜道化師〜
作:雨森 天
ワァァァァ…。
サーカスの中で、拍手が響き渡る。
<<これにて、サーカスは終わりです。忘れものに気をつけてお帰り下さい>>
皆が、サーカス会場から出ていく。
しかし…。
一人だけ、少年がいつまでも残っていた。
ぼっと、席に座ってサーカスステージを見つめていた。
ピエロ達が誘導しても、動こうとはしない。
ただ、ずっとサーカスステージを見つめていた。
そして、ピエロ達もいなくなって_。
サーカス会場の光も消えた。
それでも、少年は動かない。
しかし_
サーカスステージに、いきなり電気がともった。
「_?」
少年がステージを見上げると、ピエロが一人_。
「やあ、僕はピエ〜ン。今から君にサーカスを演じるよ。」
そう言うと、ピエ〜ンはいきなりサーカスを始めた。
ジャグリング、空中ブランコ、マジック…。
どれもこれも、一流だ。
少年は思わず拍手をした。
けれど、またサーカスが終わるとうつむいてしまう。
「どうしたの?何があったの?」
「だって…。」
ピエ〜ンは、少年が何も言わないので、頭に手をかざした。
すると、記憶がフラッシュバックする。
少年の、記憶が__。
少年は、いじめられていた。
身長が低いと、いじめられていた。
「身長が低いんなら、もっと牛乳飲めよー。」
「飲めないんなら、飲ませてやろうか?」
そういって、牛乳を無理やり口に入れる。
当然、口にはいるはずもなく、口から牛乳が出る。
すると、汚いと言われ、ますますいじめられる。
そんな感じで、もう生きるのが嫌になっている。
生きるのに、飽きたみたいだ。
「そうか…。じゃ、君の運命を変えてあげるよ。」
「そんな事、できるの__?」
「大丈夫。任せて。だから今は帰って、睡眠をしっかりとるんだよ。」
そう言って、ピエ〜ンが手を振ると、少年は家のベットだった。
_大丈夫、まかせて。_
少年は、そのピエ〜ンの声に任せて眠った。
次の日_
少年をいじめていた、人はいなくなった。
少年は、友達もできた。
毎日、楽しい日々を送れた_。
それから、何度かサーカスの前を通った。
そして、そこで_。
ピエ〜ンに似た、ピエロもみた。
いじめていた子に似ている、ピエロもみた。
けれど、もうサーカスには寄らなかった。
今は、もう見ることはない_。
あんな、孤独な時は。
もう、一生やってこない_。
だけど、一言だけ言う。
あの時、会えてよかったと思う。
ピエ〜ンに…。
end