※2006年〜2010年に投稿された100件の中から「おはなしオバケーター賞」に選ばれた作品です。
 

手紙
作:☆ちー☆

ここはどこかに存在する村。

いろんな優しいオバケたちが住んでいます。そして、ヤギ沢さんの郵便局もあります。

ここには、大事な人たちに送る手紙がいつもたくさん来ています。それを心をこめて、早く届けてあげるのが仕事です。今日、配達する手紙は100通はあるでしょう。大きめのカバンを持ってもパンパンです。

(こんだけあると、さすがに大変そうだなぁ。)

不安になりながらも配達スタート!

あっちこっちで大忙しっ!

 

5分後。。。

 

『ふぅ・・・やっと半分。』

いつも仕事熱心なヤギ沢さんは1通1通を全速力で届けるので、5分間走り続けると、さすがに疲れてしまいます。

『ちょっと休憩しよう。。。』

ヤギ沢さんが休憩しているとたまたまポスやぎが通りかかりました。

『大丈夫?運ぶの手伝おうか?』

『じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます。』

そうして2人で手紙を次々に届けていきました。

『ついにあと1通だぁ。ポスやぎさん、ほんとにありがとうございます。』

『あっ、いいっていいって!』

『じゃあ、最後の1通届けに行きましょう!』

最後の手紙は美香ちゃんという子への手紙のようです。

『(この手紙、すごーくおいしそう・・・)』

ポスやぎはずっと我慢していた誘惑に負けてしまい、手紙をパクッと食べてしまいました。

『あぁ!!大事な手紙が・・・』

手紙は口の中にどんどん吸い込まれていきます。

 

ごくん。

 

『あ・・・。』

『どうしよう。。。手紙を届けないと、その子への気持ちが伝わらなくなっちゃう。』

『ヤギ沢さん。ホントにゴメン!』

『起こっちゃったことはしたかがないよ。とりあえず、どうするかを考えよう。』

『うん。』

2人がう〜ん。と考えていると、ポスやぎの体に異変がおきました。

それは、手紙を食べたので文字や模様がすぅっと

浮かび上がってきました。

『あ!これだ!』

『ん?』

『ここに書いてある文を直接美香ちゃんって子に言ってあげればいいんじゃないかな?』

『じゃあ、そうしよう!』

そうして2人は美香ちゃんという子の家に行きました。

『どきどきするぅ〜。。。』

『でも、がんばりましょう!ポスやぎさん。』

『うん。』

『お、おじゃましまーす(汗)』

『ん?あなたたちは誰?』

『えぇっと・・・、ボクはポスやぎっていいます。』

『わたしは、ヤギ沢さんっていいます。』

『ふ〜ん。そうなんだぁ。』

『あなたの友達の由加ちゃんっていう子からの手紙があったんだけど・・・、ちょっとなくなっちゃったから手紙がないかわりに書いてあった言葉を読むね。』

『ミカちゃんへ。おげんきですか?わたしがひっこしてから、あえなくなっちゃったけど、このてがみですこしでもげんきがでてくれればわたしもうれしいよ。わたしもげんきにやっていくから、ミカちゃんもげんきにね。ゆかより。』

ヤギ沢さんはポスやぎの体に浮かび上がったもじを書いてある通りに読みました。

美香ちゃんは泣いていました。悲しくてではなくうれし涙で泣いていました。

『2人のヤギさん、どうもありがとう。』

『いえいえ、こちらこそ、手紙がなくてすみません。』

2人は手紙を届けることをずっとしていたのに今回のことについては初めてでとてもつかれたので、村に戻ったとたんバタッと寝てしまいました。

それからのヤギ沢さんとポスやぎは一緒に郵便局をやることになりました。

そして、看板にはこう書いてありました。

【お手紙を心をこめてお送りします。もし、手紙がポスやぎさんに食べられてしまっても、心をこめてメッセージをお送りします。】